猫の鼻の症状(鼻が腫れている。鼻血がでるなど)について
猫の鼻腔内腫瘍について、以前この「症例報告」の中で記載したことがあります。
その時には、「鼻腔内リンパ腫」についてのお話しを中心に書きました。
➡以前の記事
現在でも、時々「鼻の症状」がご心配で来意される方が多いです。
猫の「リンパ腫」は現在でも多く遭遇する「猫の代表的な腫瘍疾患」です。
昔は胸腔(胸の中)に発生するリンパ腫が多かったのですが、最近では「消化管」に発生するリンパ腫が増えています。
鼻の中に発生するリンパ腫も、昔にくらべて多くなってきた感があります。
しかし、猫の鼻に生じる疾患は「リンパ腫」に限ったことではありません。
多くのご家族様が、「鼻が腫れてきた」「鼻血がでる」「鼻が詰まっている」などの症状がきっかけで
異常に気づかれます。
そういった、異常を引き起こす疾患は「鼻腔内リンパ腫」でも発生しますが、その他の疾患でもありえます。
たとえば、、
単純なところでは「鼻の中に異物が入っている」かもしれませんし、
外に行く猫ちゃんなら「外傷」や「鼻の中に感染症」をおこし腫れているのかもしれません。
若い時からある「慢性鼻炎」が悪化しての症状かもしれません。
もしかしたら「鼻や咽頭部にポリープ」ができていて、そこから出血をしているかも。
知らず知らずのうちに「歯周病」が悪化し、鼻出血を起こすことも稀ではありません。
少ない疾患ですが、「血液が固まりにくい病気」にかかっているために鼻血がでることもあります。
勿論、腫瘍は重要な鑑別疾患に含まれますが、「リンパ腫」以外にも「腺癌」という別の種類
の癌の可能性もあります。
ご家族様への「問診」「猫の生活環境」「各種検査」を総合して「原因」を判断しなくてはいけません。
そして大切な事は、原則として「癌の確定診断」なくして「抗がん剤治療」は開始できません。
鼻だけでなく、内臓を含め全身の状況を調べた上で、治療しなければなりません。
見切り発車は、時に不幸を招きます。
相変わらず「癌」はやっかいな病気ですが、先入観なく対処する必要が大切だと感じています。
※いくつかご紹介いたします。
この2枚は同じ猫ちゃんです。鼻の左側が腫れて、左鼻孔から分泌物が出ています。横からみると前頭部の隆起もあります。
この猫ちゃんは、各種検査の結果「鼻腔内リンパ腫」であることが判りました。
下は「化学療法」(抗がん剤)治療した後の写真です。
次の2枚も同じ子です。鼻の右側の領域が腫れています。上の子と場所は違いますが、同じ様な状況です。
しかし、この猫ちゃんは、各種検査の結果「腺癌」でした。
最後にもう一例。
この子は、以前よりお顔の異常に気づかれており、別の動物病院にて「顔面半分の切除手術」を提案され
迷われて来院されました。
その時点では「検査」が実施されておりませんでしたので、当院にて実施しました。
上の2つの例にくらべて、お顔の変形が著しく、猫ちゃんもご家族様もさぞかし心配であろうとお察しします。
上記のように、検査を全くされておりませんでしたので、各種検査を実施したところ「リンパ腫」と判明しました。
下は「化学療法」(抗がん剤)治療した後の写真です。
前頭部の隆起部はまだ残っていますが、治療開始後の反応は良好です。
※ 大変心苦しいのですが、すべての猫ちゃんが「治療すれば必ず良くなる」とは限りません。
そして、全ての猫ちゃんのご家族様が、上記のような「診断」「治療」を実施できるわけではない事も理解しています。
ご家族様にはそれぞれのご事情があるものです。
もし、何かお手伝いできることあるなら、ご相談ください。
さいたま市大宮区 武内どうぶつ病院
なにより、動物たちに優しく接するようにしています
なにより、動物たちに優しく接するようにしています。
飼い主様に「安心」と、動物たちと一緒に暮らすという「楽しさ」のお手伝いができたらこんなにうれしいことはありません。「愛情と貢献」を合い言葉に日々がんばっています。
加えて、日々進歩する先端の獣医学に対応できるよう、勉強会や学会に積極的に参加し知識と技術の向上に努めています。