体の毛が乏しくなった!:アロペシアX(ポメラニアンなど)
アロペシアXという言葉の意味は「原因のわからない脱毛症」という意味ですので、病名というよりも「呼び名」に近いものと言えます。
昔は、「成長ホルモン反応性皮膚症」などとも言われましたし、ポメラニアンの男の子に多いので、「ポメラニアンの壮年性脱毛」などとも呼ばれています。
ただし、プードル、マルチーズ、チワワ、パピヨンでも見られます。
最近ではプードル、チワワに多いなあと感じます。恐らく、ポメラニアンよりもプードルやチワワさんの方が飼育頭数が多いからではないかと予想されます。
この疾患の正確な病態は判明していませんが、副腎という臓器から分泌される男性ホルモンのバランスが要因?とされる説や、
そもそも副腎から出る男性ホルモンの過剰産生?がおこっているのでは?とも言われいます。
近年では、分泌の異常ではなくそのホルモンを受け取る側(レセプター)に異常があるのでは?
などともいわれています。
結局の本当の原因は解明されていません。
上記の事から、人間の「若はげ」(あまりよい言い方ではありませんね(>_<))に近い脱毛症であると予想されています。
特徴として、頭より下の体幹部の領域に脱毛が生じます。特にお尻周り、脇腹、頚部の腹側領域
の毛が乏しくなり、左右対称性の脱毛です。足は肘やかかと位までで、足先はあまり脱毛しません。
そしてそれは進行性であり、特に体幹部の毛量が次第に少なくなってきます。
初期には少し貧毛な程度ですが、だんだんと脱毛がハッキリしてきて、皮膚の表面(肌の下地)が見えてきます。
トリミングでサマーカットにしてから、全く毛が伸びなくなった!と言われる方もいらっしゃいます。
さらに進行すると、皮膚自体もくすみが目立つようになってきます。(色素沈着)
ちなみに「アロペシアX」は元気や食欲といった全身状況に変化は見られません。
もし、毛や皮膚以外の症状が生じたなら他の疾患が併発されている可能性が極めて高いので、別途検査が必要です。
「治療について」
実は、治療については確立したものは存在しません。
当院では、内臓系の異常がないかまずは血液検査、時に画像検査(エコーなど)を行います。
最終的に「アロペシアX」と診断された場合には、以下のような治療をこころみます。
様々なビタミンやサプリメント(メラトニンや酵母抽出物など)の投与。
※ サプリメントは医薬品と違い効果効能を明記できないので、補助的な位置づけになります。
※ サプリメントに対して「これに効きます!」とはいえません。「医薬品医療機器等法第68条」という法律に抵触します!!
また、医薬品である副腎の治療薬として、「トリロスタン」やホルモン製剤を使用することもあります。
★当院での患者さんの例★
●治療前の状態●
◆治療後の変化◆
当院でも全く同じ方法で治療してみても、改善する犬と改善に乏しい犬とがいます。
完全に地肌が露出し色素沈着がおこっている犬は改善が乏しい印象をうけますので、早い段階でのアプローチが良い結果がでやすいかもしれません。
ただし、犬の皮膚は紫外線に弱いので、肌が露出してしまうほど脱毛が進行している場合には、昼間の外出時には日光から肌を守るため洋服を着せるのも良いと思います。
また、皮膚が過度に乾燥したり、炎症を起こしてしまった場合にはサプリメント(メラトニン)、内服薬(トリロスタンなど)や外用薬(保湿剤など)で治療します。
アロペシアXについても、ご相談下さい。
さいたま市 大宮区 武内どうぶつ病院