★全身麻酔と鎮静・鎮痛について★

手術や痛みを伴う検査を行ったりする場合には、「痛み止め処置」を実施いたします。もちろん、犬も猫も痛みを感じるのは人と同じです。

犬猫は人間に比べて痛みに強いと言われていました時代がありましたが、現代の獣医学や動物学では否定されています。もちろん個体差もありますが、人より敏感に痛みを感じる子すら存在します。大切なのは、人も犬の猫も、もちろん野生動物でも痛みを感じるということです。

現在すでに痛みが存在している場合はどうでしょう?

この場合にも、積極的に痛みを取り除くことは、動物たちの苦痛を和らげるだけでなく、病気の回復を促進することがわかっています。

特に手術において、予想される痛みの程度をあらかじめ予測した上で、お薬の種類や量のお薬を選択し、手術実施前より投与を開始します。
現在は必要十分量でかつ、数種類のお薬をコンビネーションで用いる方法(マルチモーダル鎮痛法)でおこなっています。

痛み止めのお薬には、それぞれ個性があります。
とても強力に痛みをとめるが、効いている時間がとても短いお薬。
即効性はないが、長い時間痛みを抑えることのできるお薬、などなど。
また、眠気を誘う薬もあれば、シャキっとして外見状の変化が起きにくい薬もあります。
このように、作用の違うお薬を組み合わせることで、さまざまなケースに対応しています。

たとえば、日帰りの手術の子に眠気の強い作用のお薬を使ってしまったら、どうでしょう? ご家族様がお迎えに来た時には、まだぼーっとしていて、覇気が無く力が入りにくい状況かもしれません。これではご家族さまに過度の不安を与えてしまうでしょうし、状況にビックリしてしまうかもしれませんね。

反面、入院の必要な子にはご家族と離れた不安感を少なくする作用の期待できるタイプや、夜ぐっすり眠れるようにある程度の催眠作用が期待できるお薬を使うなど、それぞれの性格や状況を考慮した薬剤選択を行っています。

また、肝臓を患っている子、心臓病の治療の子などは併発疾患の有無によって使用しない方がよい薬剤もありますので、組み合わせは重要です。

★重要なのは「同じ手術内容であっても、使用する鎮痛薬や麻酔薬の種類や量はその子によってまちまち」ということです。

合わせてお伝えしたいのは、決して「年だから」という理由だけで、必要な手術をあきらめないで欲しいと思います。麻酔前の検査をしっかり実施した結果、別の選択肢がみつかるかもしれません。また、「麻酔をかけないで行う検査や処置」は麻酔をかけるよりも安全とは言い切れないということです。

嫌がる子をムリにおさえたり、抑制したりすると、脊椎や関節に不可をかけて脱臼してしまったり、興奮による高血圧や不整脈を生じて予期せぬ事態を招いたりすることもあります。上手に、鎮静や麻酔を使う事は動物のみならずご家族さまの負担の軽減にもつながります。

少ない量の薬剤を、いくつか組み合わせることで負担の少ない麻酔・鎮静・鎮痛を実施することも可能な時代になってきていますので、何かできることはないだろうか?を一緒に考えていきましょう!!

武内どうぶつ病院