▲お腹のシコリ▲
数ヶ月前から、お腹にしこりが出来て、しだいに大きくなった為来院されました。
わんちゃんは元気もあり、食欲も旺盛ですが、このシコリを触ると嫌がるようです。
約10ヵ月前に、他の病院さんで避妊手術をお受けになったそうです。
術前では、縫合した腹壁が一部癒合不全を生じて、腹腔内脂肪が出たものと思われました。
しかし、この子が「ダックス」であることが少しひっかかります。
しかも手術を受けている病歴があります。ご存知の方も多いかと思いますが、ダックスは、術後「縫合糸反応性肉芽腫」が生じやすい犬種です。
肉芽腫は色々な原因で生じますが、手術で用いた「縫合糸」つまり糸に対して生体が反応して生じます。
免疫応答が関わっていると言われ、それを裏付けるように、手術で切ったり、縫ったりした部分以外にも、皮膚炎や結節が生じることもあります。
シコリを触るのを嫌がっていることからも、早急に切除し、縫い直す必要があると判断しました。
今現在、100%肉芽腫を発生させない縫合糸は存在しませんが、一般的に発生率が低いとされているものが、モノフィラメントと呼ばれる糸です。
より糸や編み糸と言われる糸がありますが、こちらの糸は推奨されていません。(注意:こちらも医療用に認可されている糸です)
以上をご説明し手術となりました。ご家族さまのご決断に感謝です。
毛刈りをして、消毒したところです。左の写真でうすら盛り上がっている部分がそうです。
シコリの真上を切皮します。直下に、炎症をおこした脂肪がみえてきました。右下に何やら黒い物がみえます。以前の手術で使ったと思われる糸です。
吸収されていませんので、非吸収性の縫合糸のようです。
腹膜・腹筋は肥厚(正常より厚くなっている事)しており、分厚くなっていました。念の為、卵巣子宮の存在していた部位をチェックしましたが、問題ありませんでした。(よかった)肥厚して癒合しにくくなっている腹膜・腹筋筋膜を部分切除して、トリミングします。(左)
古い糸を全て除去して、吸収性モノフィラメント糸で縫い直しました。(上の右)
上は、切除した腫瘤と古い糸を除去したものです。
皮膚縫合をしっかり行って終了です。
やはり、ダックスをはじめ小型犬は、なるべくモノフィラメント吸収糸を使用するか、シーリングのできる部位にはシーリングをして、なるべく糸の使用量を減らした方がよいと思われました。現在のところ「縫合糸反応性肉芽腫」コレ!がベストという標準化された方法はありませんが、ベターな方法はあります。
シコリの治療、診断もご相談くださいませ。
武内どうぶつ病院