☆犬の「高脂血症」について

高脂血症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪が通常より増加している事をいいますが、
人の場合、現在では高脂血症という言葉ではなく「脂質異常症」という診断名に変わっています。
動物の方では、それにならって「脂質代謝異常症」と言ったり「高脂血症」といったりしています。
いずれにせよ体内で「脂質」のバランスが悪い状態と言えばイメージしやすいかもしれません。
最近、犬で「高脂血症」の子が増えているような気がします。
人間では、高脂血症のひとつの病態として「粥状動脈硬化(かゆじょうどうみゃくこうか)」
が知られています。いわゆる「動脈の壁」に脂質が染み込んで不整化や肥厚がおこり、
血管が細くなったり、詰まってしまったりする状態のことです。
放っておくと組織が壊死してしまうことがあります。
この病態は、犬では起こらないとされてきたようです。
しかし、実際には同様な事態が犬にも報告されています。
以下の様な報告がなされています。
★江口邦昭 : 甲状腺機能低下症による高LDL血症が 原因の閉塞性動脈硬化で前肢端が壊死脱落したと疑 われる犬の1症例 日本小動物獣医学会(九州)抄 録集 : 92(2008)
上記の内容を簡単にまとめますと、脂質代謝異常によって足の血流障害を生じ、その結果組織への酸素・栄養不良が生じた結果、組織が壊死を起こしたと思われます。
高脂血症がある場合、「痩せましょう」という軽いイメージではなく、時として足を失う場合もあるということになります。
ちょっと怖いですね。
もちろん、頻度は稀でしょうが、、。
しかるに、高脂血症が認められ場合、きちんと鑑別診断をしたうえでその子にあった「対策」をとる必要があるのだと考えています。
高脂血症の背景に糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、脂肪肝
胆泥症などが背景に隠れていることがありますので、その当たりを探っていくことは大切です。
また当院では、各種の鑑別診断の一助として「血中脂質代謝解析検査」を合わせて実施することもあります。
こちらは「Lipo Test(リポテスト」)と呼ばれるものです。簡単に言えば、体内に増えている「脂質」の中身を分析します。
正確には血中のリポ蛋白といって、「脂(あぶら)」は水に溶けないので蛋白質と一緒になって
血液中に溶けているのですが、そのタンパク=「リポ蛋白質」を分析解析する検査です。
結果に応じてその子にあった「高脂血症対策」を見つける一助になります。
高脂血症・脂質代謝異常症についてもご相談下さい。 さいたま市大宮区 武内どうぶつ病院