高脂血症について(その2)

以前にも高脂血症について記載したのですが、その後色々なケースに遭遇しましたので改めて書いてみたいと思います。

実際、犬で「高脂血症」の子が増えているような気がします。

 

高脂血症とは、血液中の「コレステロール」や「中性脂肪」が通常より増加している事をいいますが、

現在、ヒトでは「日本動脈硬化学会」で「高脂血症」という言葉ではなく「脂質異常症」という名称に変わっています。

動物の方では、それにならって「脂質代謝異常症」と言ったり今でも「高脂血症」と呼んだりしています。

呼び名はともかくとして、体内で「脂質」のバランスが崩れている状態と言えばイメージしやすいかもしれません。

人間では、ひとつの病態として「粥状動脈硬化(かゆじょうどうみゃくこうか)」が知られています。

いわゆる「動脈の壁」に脂質が染み込んで不整化や肥厚がおこり、血管が細くなったり、詰まってしまったりする状態のことです。

放っておくと組織が壊死してしまうことがあります。(梗塞)

 

この病態はヒトでの事であり、犬では起こらないと考えられてきました。

 

そもそもが、犬と人間では寿命が違うので、動脈硬化などが生じる前に犬は寿命をむかえる

ことが多いと考えられていたようです。

しかし、実際には犬にも同様な事態が報告されています。

江口邦昭 : 甲状腺機能低下症による高LDL血症 原因の閉塞性動脈硬化前肢端壊死脱落したと疑 われる犬の1症例 日本小動物獣医学会(九州)抄 録集 : 92(2008)

上記の報告を簡単にまとめますと、脂質代謝異常によって足の血流障害を生じ、その結果組織への酸素・栄養不良が生じた結果、組織が壊死を起こしたと思われます。

 

私も報告に添付されている写真を拝見しましたが、大変ショッキングな写真でした。

この文面には添付しがたい状態の光景がそこには写っていました。

 

高脂血症がある場合、「痩せましょう」という軽いイメージではなく、

時として足を失う場合もあるということになります。ちょっと怖いですね。

もちろん、頻度は稀でしょう。

健診等で、高脂血症が認められ場合、きちんと鑑別診断をしたうえでその子にあった「対策」をとる必要があるのだと考えています。

 

強調したいのは、「高脂血症=肥満」というわけではないということです。

 

高脂血症の背景に糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、脂肪肝

胆泥症などが背景に隠れていることがありますので、その当たりを探っていくことは大切です。

 

当院でのその他の事例をいくつかあげると、、。

●飼い主さまは「白内障」と思っていたが、実は「角膜の脂質沈着」であった例

●脂性の肌質の子の血液検査をしたところ「高脂血症」が見つかり、こちらの治療により皮膚が大きく改善した例

●肝臓の数値の異常により肝臓の薬を長期のんでいたが、高脂血症の治療を追加したところ改善した例

●クッシングと言われ治療していたが、実は高脂血症が背後にあり、悪化因子であった例

●てんかん発作の犬に高脂血症の治療を追加したところ、発作頻度が激減した例

などなど色々な例があります。

 

また当院では、各種の鑑別診断の一助として「血中脂質代謝解析検査」を合わせて実施することもあります。

こちらは「Lipo Test(リポテスト」)と呼ばれるものです。

簡単に言えば、体内に増えている「脂質」の中身を分析します。

正確には「リポ蛋白」といって、「脂(あぶら)」は水に溶けないので蛋白質と一緒になることによって血液中に存在しているのですが、

そのタンパク=「リポ蛋白質」を分析解析する検査です。

 

リポテストの結果に応じて、その子にあった「高脂血症対策」を見つける一助になりますし、薬物治療が必要な場合には薬剤の選択に大いに参考になります。

 

リポテスト(Lipo test)は予約なしで実施可能ですが、まずはご相談ください。

高脂血症・脂質代謝異常症についてもご相談下さい。 さいたま市大宮区 武内どうぶつ病院