猫の小腸腺癌(しょうちょうせんがん)

数ヶ月前より嘔吐と便秘があり、現在通院で治療しているとのことで、セカンドオピニオンで、6才の猫ちゃんがご来院されました。

現在、ステロイドと便秘薬を処方されて飲んでいるとのことでした。

 

お薬を投与すると一時的に良くなった時期もあるそうですが、最近病状が思わしくなく、わざわざ遠方よりご来院されました。

最近は激やせしてきており、5kg近くあった体重が、3kg近くまで落ちてしまい元気もなく猫ちゃんも具合が悪そうです。

 

さっそく各種検査を実施いたしました。

 

★検査の結果は、、。

左が横向きの画像、右が仰向けの画像です。

レントゲン検査では、「小腸の拡張」「大小不同」が認められます。ソーセージ状にみえる黒い所は、小腸内に貯留した「ガス」です。

消化管は、言葉が示すように管(くだ)ですから、ある部分に多量にかつ腸管壁を押し広げるようにガスが溜まることは、不可能です。

絶対に、前後に移動してしますはずです。

ガスが貯留し、消化管が拡張しているということは消化管の運動機能低下や閉塞が疑われます。

 

腸には、小腸と大腸があることはご存知の方も多いと思います。

言葉どおり小腸は小さい(細い)腸です。しかし、レントゲンには大腸よりも大きく拡張した小腸が写っています。

 

事態は深刻です。

 

閉塞している確率が高い為、その原因は何であれ解除しないと命にかかわる状況となります。

 

ご家族さまに、現在の猫ちゃんの置かれている状況をお話し、緊急性があるため、原因を確かめる必要がありそれには

全身麻酔による開腹が必要であることをお話ししました。

また、同時この様な場合には消化管の腫瘍、すなわち「がん」の可能性もあり、その際には「小腸の切除手術」を同時実施することの必要性を

ご家族さまへお伝え致しました。

 

一晩入院し、抗生剤の全身投与、脱水や電解質の改善を行い翌日手術を実施することになりました。

 

ご家族さまのご決断に感謝です。

 

開腹したところ、重度に拡張した消化管を確認しました。

私の指に乗っている腸は、重度に拡張した小腸(回腸)で、写真の中央から下に続く腸が正常な小腸になります。

術前にレントゲン検査で確認されたように、正常の小腸経の5倍以上に膨れあがっています。

写真中央部には硬く触れる部分があり、これが腸管内部の疎通を障害しています。

同時に、腸間膜リンパ節を確認します。鑷子(ピンセット)の先で示している所が、リンパ節です。

腫大を認めましたので、同時にリンパ節生検を実施しました。

病理組織検査の結果、患部が癌であり、かつリンパ節にもがん細胞の存在が確認できれば、それは「リンパ節転移」を意味します。

炎症細胞のみなら良いのですが、、、。

 

小腸(回腸)に重度に狭窄した部位を確認。病変部を含め、正常と思われる部位で切除したのち、小腸の端々吻合術を実施いたしました。
★猫の小腸に発生しやすい「がん」にはどんなものがある?

 

猫ちゃんの小腸に多く発生する腫瘍は、「腸腺癌」「リンパ腫」「肉腫」「肥満細胞腫」「好酸球性硬化性線維増殖症」などの報告があります。

一番発生頻度が多いのは、おそらく「リンパ腫」でしょう。

 

「リンパ腫」はいくつかの決まった増殖パターンを示すことが多いので、術前のレントゲンや超音波検査所見(とても重要)や、手術時の肉眼所見からある程度予想することができます。

話しはそれますが、実前にリンパ腫と診断ができかつ腸管穿孔が疑われなければ、ファーストチョイスの治療は、手術ではなく抗がん剤治療ということになります。

 

「好酸球性硬化性線維増殖症」は発生部位に特徴があり、胃の幽門部、回盲結腸接合部に多く発生すると言われています。かつ「塊状」になるので今回の

硬結・狭窄病変をとるのは稀です。詳細はいずれとしますが、こちらの治療は内科治療ですが、外科と併せて治療することもあります。

 

★今回の猫ちゃんの結果は?

病理組織検査の結果は「小腸腺癌」でした。

 

★その後の経過

手術により、閉塞が解除されたため、猫ちゃんは食欲旺盛となり、吐くこともなくなりました。

再診時には、700gも体重が増え、毛づやもよくなりました。

 

しかし、「腺癌」であるため、今後のケアには十分な観察が必要です。

「癌」であっても、こちらの予想以上にがんばって長生きしてくれる子もいます。今後も、ご家族様と相談しながら、ケアを続けています。

やはり思うことは、「この子に今してあげられる事は何なのか」「ご家族さまにしてさしあげられる事は何なのか?」をご一緒に考えることが大切だと思います。

できる事はまだまだ、きっとあると思うのです。

★まとめ★

猫ちゃんの嘔吐や食欲不振がある場合で、対症療法に改善が認められない場合には、「腺癌」や「リンパ腫」などの腫瘍が原因であることがあります。

特に、体重が減ってきて痩せてきている場合には、一層の注意が必要です。