★「犬のセンダン中毒」
センダンという植物をご存知でしょうか?
街路樹や牧草地などに植えられていることも多いようです。
初夏に花が咲き、秋に実がつきます。実は最初緑色ですが、しだいに黄色になってきます。
センダンは、学名を「Melia azedarach」といい英名はChinaberry(キナベリー)と呼ばれています。
このセンダンは中毒をおこすことが知られています。当院でも患者さんが発生しましたので少しまとめとして書いてみます。
幸運にも、当院の患者さんは大事には至らずにすみました。
センダン中毒については、詳しくはわかっていないことが多いようです。
センダンの樹皮、果実に中毒性があるとされていますが、葉や花にも中毒物質が含まれていると記載されているものもあります。
私が調べただけでも、犬だけで無く人間、牛、豚などに中毒報告論文が見つかりました。
センダンの中毒物質は「リモノイドテトラテルペン構造」を持つ有害物質である「メリアトキシン(meliatoxin)」であるとされています。
中毒量についてですが、豚、羊で体重あたり約 5 g/kgという報告があります。
犬の場合では、実の数で5から6個、ヒトの子供の場合、6から8個の摂取で死に至ると報告されています。
ヒトでの別の報告では、6~9種の果実、30~40種子、樹皮400gが消費された場合に発生すると言われています。
ただし、犬の致死量として報告されている「実5~6個」ですが、体重換算ではどのくらい
になるのかは良く分かっていないようです。
大型犬のゴールデンレトリバーと小型犬のチワワでは、体重が違ってくるので、致死量の実の数にも差がでることが予想されます。
豚の報告では接種後約30時間で痙攣震え、頻脈、低体温症、昏睡等が引き起こされ死に至るとされており、その致死量は
経口LD 50(半分の頭数が死に至る量)として、6.4ミリグラム/ kgが報告されています。
★当院の患者さまが、摂取した実物(熟した実のようです)
左は中の種子を取り出した物。
・犬の中毒の症状について
症状は通常、摂取から数時間で発症するとされており、2~4時間以内に始まりまると記載されているものもあります。
また、重症例は36~48時間以内に死亡すると記された報告もあります
主な症状に主に2つに分類されるようです。
ひとつは消化器症状(食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛など)
もうひとつは、中枢神経症状(興奮、痙攣、運動失調、沈鬱、麻痺、昏睡など)です。
その後 循環性ショックと呼吸困難を生じ、改善しないと死の機転をたどると記載されています。
血液検査の所見として、AST(GOT)とCKの値に上昇がみられるとの報告があり、これは、肝臓や筋肉の組織障害によるものとされています。したがって、センダンを食べたことがわかったら、血液検査を実施し、肝臓や腎臓の機能や障害を起こしてこないかモニターする必要があります。
また、不幸にしてお亡くなりに成られた犬の病理解剖所見では、重度の腎うっ血や中程度の肝うっ血が認められたと報告されています。
・犬の中毒の治療
摂取してから間もない場合には、催吐処置を行い、嘔吐させ未吸収のセンダンを吐き出させます。
摂取してからの時間にもよりますが、活性炭投与も中毒物質であるメラトキシンの体内への吸収を少し防ぐことが
できるかもしれません。
場合により、点滴等を行ってすでに吸収されたセンダンの成分を希釈すると共に、排泄を即します。
自宅では、なるべく水分を摂取させて十分に普段の生活を観察する必要があります。
まずは、主治医の先生に相談するようにするとよいでしょう。
さいたま市 大宮区 武内どうぶつ病院