トセラニブ(商品名:パラディア)について。
トセラニブ(商品名:パラディア)は、「分子標的薬」と呼ばれ、細胞増殖や浸潤、転移などに関与する「分子をターゲット」としてその制御を目的として開発されたお薬です
今までの抗がん剤と違って、腫瘍細胞だけを狙い撃ち!するように効いてくれますので、通常の抗がん剤よりは副作用が少ないのが特徴です。残念ながら、副作用が全く無いわけではありません。現在、犬のみならず、猫へも投与されるようになってきたお薬です。
トセラニブ以外にも、以前よりイマチニブという分子標的薬が獣医学分野で使われていましたが、トセラニブ(パラディア)は応用範囲が広いお薬として今、注目されています。
症例報告のページに記載しております●犬の甲状腺癌●の記事にもトセラニブ(パラディア)について併記したのですが、再度単独で記事を書いてみます
もともとは、「犬の肥満細胞腫」という悪性腫瘍に対する飲む抗がん剤として世に出たものですが、その他の癌に対しての効果が試みられてきています。
甲状腺癌、頭頸部がん、転移性骨肉腫、鼻腔内癌、アポクリン腺癌、扁平上皮癌、などで試みられています。
外科手術が適応できない患者様に対しても、ひとつの選択肢になると思います。
また、猫ちゃんにも状況に応じて使用可能ということもわかってきました。
与える量と回数、猫に使用した場合の副作用、併用薬の有無などについても様々な事が少しずつ判ってきました。
トセラニブの猫への応用がさらに解明できるとうれしくおもいます。
ただし、「効能外使用」となるため主治医の先生と動物のご家族さまとお話ししながら使用法をきめていかねばなりません。
まだまだ模索段階ですが、パラディアは「肥満細胞腫以外のさまざまな固形がんに対する臨床応用に期待の持てるお薬」といえます。もとろん期待しすぎもいけませんが、応用範囲が広がっていくとよいと思います。
◎なぜ他の腫瘍に効くのか?
「トセラニブのもつ2つの腫瘍抑制効果」
トセラニブは分子標的薬(特定の分子の働きを抑制することによる直接的な腫瘍増殖抑制)の効果と、腫瘍が増大するのに必要な毛細血管新生抑制効果
の2つの作用があると言われています。
様々な腫瘍に対して効果を示すのは後者のメカニズムが発揮されているからではないかと言われています。
またNSAIDS(消炎剤のひとつ)と併用することで、予後の延長がみられたとの報告がありますので単独使用よりも効果的といえます。
前述したように、トセラニブ(パラディア) は分子標的薬に分類されるため、安全性の高い部類のお薬ではありますが、副作用がない薬ではありません。
動物の状況のみならずご家族さまの生活環境や状況によっては、トセラニブを「使用しない方が良い」状況も考えられます。
また、使用にあたっては、定期的な診察と血液検査を実施していく必要があります。あくまで「腫瘍治療の選択肢のひとつ」であるということです。
担当医と話し合って投薬の有無を決めていくのが最良と思います。
わんちゃん、猫ちゃんの抗がん剤治療についてもご相談ください。
武内どうぶつ病院