犬の椎間板ヘルニア手術
椎間板ヘルニアは軽度のことも多く、内科的治療(エラスポール注射やステロイド内服薬など)で良くなる場合も多いのですが、状況によっては手術をおすすめしなければならない患者さまもいらっしゃいます。
獣医学的にはともかくとして、手術を実施するしないは病院や先生によってまちまちであるのが現状だと思います。
また、ヘルニアの生じた脊髄部位によっても対応が違ってきます。一般的には頸椎部分に生じたヘルニアで症状が顕著に出ている場合には手術をおすすめする場合が多い傾向にあります。
その子が良くなるかならないかは、その時点での病状のグレードによるところが大きいです。
まずは、本当にヘルニアなのかをきちんと判断し、そうならばグレード判定をして内科で行くか外科でいくか
決めていくことになります。
椎間板ヘルニアはヒトでも多い疾患ですので、よく犬と比較されますが、人と犬とでは病態が全く違います!!
それは「犬と人間とでは脊髄の解剖が全く違う」からです。
「犬のグレードの高い腰部椎間板ヘルニア」は「ヒトでの脊髄損傷」に相当します。
早急に手術で神経の圧迫をとらないと、回復が厳しくなってしまいますし、自ら排尿・排便ができなくなってしまうこともあります。
※(注意)全ての椎間板ヘルニアに外科手術が必要なわけではありません。
◆当院での「椎間板ヘルニア手術」についての一例をご紹介いたします。
ダックスの女の子の例です。
後足に力が入らず、だらり力が抜けてしまい、前肢だけでの歩行しか出来ない状態でした。
診断の結果、腰椎部分(第13胸椎と第1腰椎間に生じたもの)の椎間板ヘルニアが生じていたため手術をおこない、椎間板物質を除去することになりました。
けっして簡単な手術ではありません。 ご決断いただいたご家族さまに感謝です。
★下はその時の手術写真です。
真上からとった写真なので、ちょっと見にくいかもしれませえんが、先端が丸い金属の先端にみえるのが、脊髄を圧迫している椎間板物質です。
これを注意深く取り除きます。
別の写真です。脊髄にアプローチするために背骨の横の筋肉を剥離して、椎骨に達した後に椎体の壁を特殊なドリルや
専用の手術器具によって削っていきます。そうすると、脊髄が顔をだします。
下の写真の真ん中に写っている、横に白く棒状に見えているのが、椎骨を削り露出させた「脊髄」です。
脊髄を傷付けないように、注意しながら脊髄の圧迫を取っていきます。
下の写真はは取り出した「椎間板物質」の一部です。このゴミの様な物が脊髄を圧迫している張本人です。
腰椎部の脊髄は頚椎部に比較して、椎体骨と脊髄が密着している構造になっているために圧迫が軽度でも症状がでてきます。
この構造ゆえ、圧迫の度合いが強いと容易に脊髄神経に障害がでやすい特性にもなっています。
★まとめ
※手術が万能・万全な治療法というわけではありません。ご家族さまとご相談のうえで治療法を決定していきます。
※※全ての椎間板ヘルニア症例に外科手術が必要なわけではありません。
★椎間板ヘルニアの内科治療について。
シベレスタット「エラスポール」という注射剤を用いた、椎間板ヘルニアの内科治療を行うことがあります。
効果はその子によりまちまちですが、「明らかに良くなっている!」という機会にも遭遇します。
エラスポールは、好中球エラスターゼ阻害剤に分類される薬で、もとはヒトの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの呼吸器障害のために開発されたお薬です。
好中球という炎症細胞が集まってくる=「炎症が進む」のを抑えてくれます。
犬の椎間板ヘルニアの内科治療では、ステロイドの代わりに使用されることがあります。(エラスポールの注射は、毎日の通院での実施となります。)
※※※手術後は、リハビリをおこない回復をうながします。
椎間板ヘルニア手術についてもご相談ください。
さいたま市 武内どうぶつ病院