命に関わることもある「糖尿病」
「糖尿病」は犬にも猫にも見られる、代表的な代謝性疾患です。
糖尿病といっても、そのしくみには複雑な病態生理があり、治療も一筋縄には生きません。その子その子によって、アレンジが必要になってきます。
「糖尿病」には、ごくザックリと説明すると、以下の3パターンがよく認められます。
1, 通常の「糖尿病」
高血糖だけが認められて、元気や食欲・飲水も大きな変化がなく、見た目は通常とあまり変わりの無い状態の子。
2, 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
高血糖状態に加えて、急に元気がなくなり始め、体調も悪い状態になっている子。
3, 高血糖高浸透圧症候群(HHS)
高血糖の状態に加えて、脱水が強く、グッタリしており、状態によっては立ち上がることも出来ない様な子。
※注意 1→2→3の順に進行するという訳ではありません。
3つについて簡単にお話しします。
1のパターンは、「最近、なぜか水を多く飲むようになってきて、、。」といった症状の子で血液検査してみた結果、判明する場合も多いです。
基礎疾患や併発疾患(高血糖を起こすorそれ以外の他の病気)の有無を調べた後に、血糖値コントロールを行っていきます。状態にもよりますが、全員が直ちにインスリン注射療法をスタートするとは限りません。
2の状況の子では必ず治療にインスリンが必要になります。のちにインスリンから離脱できる子もいますが、少なくとも初期治療には必須です。
高血糖のみならず、代謝(生きていく上で必要な身体のさまざまな化学反応のこと)異常をおこしており、脂質代謝、ミネラル代謝(Na.K,Cl,Ca,Pなど)に障害をおこしている状態です。
この状態を簡単に説明しますね。
身体の多くの細胞は、糖「グルコース」を取り込んでエネルギーとします。
しかし、グルコースは、原則「インスリン」という仲介者の存在がないと、細胞内に取り込むことができません。これは「栄養があるのに使えない」という状態です。このため、身体は脂質(脂肪)を分解・作り替えを行って、エネルギーを生産するようになるのですが、その時に生じる「ごみ」が問題になります。その「ごみ」は、アセト酢酸、やβヒドロキシ酪酸などで「ケトン体」とよばれる物です。このゴミが蓄積すると、体内が極度の酸性状態にかたむきます。これを「代謝性アシドーシス」状態といいます。
すなわち、糖尿病の子がこの状態になってしまったことを「糖尿病性ケトアシドーシス」と呼ぶわけです。
尿検査をしているところです。
上から2つめが紫色になっています。これがケトン体陽性の反応になります。
3の「高血糖高浸透圧症候群」は、命の危険があり、お亡くなりになってしまう子もかなりの割合でいらっしゃいます。
脱水状態が酷く、腎機能障害をともなっており、脳神経にも重篤なダメージを生じている状態です。
高血糖高浸透圧症候群(HHS) で昔は「非ケトン性高浸透圧昏睡」(ひ・けとんせい・こうしんとうあつ・こんすい)と呼ばれていたのですが、
ケトンが生じていることもあるし、必ずしも昏睡状態になっていない子もいるため、上記の様に呼称が変わっています。猫に発生が多いと言われています。この病態の背景には「慢性腎不全」や「慢性腎臓病」などの併発疾患があることが指摘されています。特に「膵炎」は猫の糖尿病の併発疾患としてよくみられるものです。
「糖尿病」の症状は多岐にわたっています。それぞれに判断し、治療の内容が違ってきます。
人の医学では「糖尿病科」という独立の診療科も存在します。おなじ「糖尿病」という病名の患者さんであっても、治療内容は患者さん一人一人に対応した個別の治療が必要であるためでしょう。
獣医の分野においても、ちいさなチワワから、大きなゴールデンレトリバーまで違いますし、ミックス種から、数多い純血種までいますので大変です。
動物においても、使うインスリンの種類や量、回数も違ってきます。
色々な種類の「インスリン製剤」
「糖尿病」は長期にわたり管理していかねばならないことが多いので、ご家族様も大変ですが、しっかりモニターしていく必要がありますね。
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