「外耳炎」? 猫の耳垢腺癌について

外耳炎の原因は多岐にわたっており、感染(耳ダニなど)・アレルギー(食物アレルギーやアトピー性皮膚炎)・体質(アブラ症などの体質や犬種による要因)・異物(草のタネの混入や腫瘍・ポリープなどの存在)・内分泌疾患や免疫疾患・不適切なイヤーケア(耳掃除)など、その他いろいろな要因によって引き起こされます。疾患自体はとてもメジャーなのですが、「外耳炎」は大変奥が深く、一筋縄ではいかないことも多い疾患と言えます。

耳の炎症の背景にひそんでいる「主原因」を見つけ出したいというのが、診療をしていて思うところです。

ある著名な皮膚科の先生のご講演で、「耳の異常は、耳だけを診ない」とお話ししていたことを思い出します。私も、時々この言葉を思い出して診療しています。

★当院での事例をご紹介します★

「猫ちゃんの耳の臭いが気になる」「痒いのか、よく頭を振っている」という状況でご来院がありました。

ずいぶんと前から耳の治療をしていたらしいのですが、臭いが取れないという患者さんでした。

ちなみに、猫ちゃんは犬とくらべて「外耳炎」は多くありません。「耳ダニ感染症」を除外すると、自己外傷性アレルギー、腫瘍などが多い印象です。

 

今回の猫ちゃんは、よく観察すると耳道内に赤みを帯びた「シコリ」ができていました。今まで長期にわたり治療してきたとすると、当然消炎剤や抗菌剤のお薬は使われてきたと思われます。そうすると、当院で再び外用薬や内服薬での治療を再開してみても効果は乏しいと思われます。

この時点では、腫瘍の可能性を第1に考えて「切除生検」をおすすめすることになりました。

しかし、検査にはある程度の侵襲が伴います、猫ちゃんも暴れてしまいますので、短時間ではありますが全身麻酔が必要になってきます。以上の状況をご説明し「シコリ」の正体をキチンと調べる必要性をご説明いたしました。そして後日、生検を実施することになりました。

ご家族様のご決断に感謝いたします。

麻酔のかかった状態です。各種麻酔モニターをしながらの実施となります。

 

耳の中を洗浄し、患部を消毒し患部を見たところです。

赤いシコリが見えます。

 

生検とはいえ、なるべく根こそぎ切除してあげたいです。

 

切除した、「シコリ」です。実は、奥にもうひとつ存在していました。合計2つのシコリを切除しました。

 

術後は、通気が良くなり耳垢も排出しやすくなったため、臭気は全くなくなり、ご家族様も安心していただきました。

 

◆しかし、病理検査の結果は「耳垢腺癌」という悪性腫瘍でした。この腫瘍の場合、獣医学的には、「耳道切除」手術が推奨されます。

今後の治療方針については、ご家族様とお話し合い治療計画を立てていく予定です。

★まとめ★

外耳炎を代表とする耳のトラブルについてです。「とりあえずの治療」で良化してしまえば、何の問題もありませんが、

月日がたって慢性化すると、当初の「主原因」もなかなか特定するのが困難になってきます。一方で、「単なる耳の赤み・かゆみ」でいきなり様々な検査を実施するのもコスト面やご家族様の負担を強いることに成り、スマートな治療とは言いにくいのも事実です。

しかし、治りにくい「耳の症状」の場合には、今回の様に耳に腫瘍が発生している場合もあるため、経過しだいですが、一度立ち止まって「キチンとした診断」をする時期を設けてみるのも良いかと思います。

さいたま市 大宮区 さいたま新都心 見沼区 武内どうぶつ病院です。

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