犬の去勢手術(当院での手順と工夫)
犬の去勢手術に対して、簡単にでもイメージ為て頂こうと思い。特に手術のついてクローズアップして書いて見ます。
男の子の不妊手術のことを一般に「去勢手術」と言います。
手術のメリット、デメリットがあり、詳細は割愛いたしますが、何と言っても「会陰ヘルニア」と「前立腺疾患(前立腺膿瘍など)」の発生抑制
には有効です。いずれの疾患もほぼ外科治療となるために、高齢犬の場合には侵襲の大きい手術となる場合も多いのが現状です。
※ いずれ機会をみて、会陰ヘルニアの症例をご紹介したいと思います。
おおまかな手術の流れです。
1身体一般検査で異常がないか確認。
2術前検査を実施(避妊手術・去勢手術でも全身麻酔を施すことに変わりませんので、当院では全頭検査を実施しています)
3検査結果より、麻酔リスク等を総合的に判定。
4手術日を決定いたします(手術は予約制となります)
5手術日の午前中に来院していただき、お昼に手術を実施いたします。
6男の子は日帰り手術、女の子(避妊手術)は一泊入院にて実施となります。
7約一週間後に術部のチェック。
今日は、5の手術の様子をご紹介いたします。
全身麻酔、痛み止め等の処置が行われます。一気に麻酔状態にもっていくのではなく、その子の状態・性格・体格など様々なことを総合的に判断して
使用する薬剤を選択しますので、同じ体重であっても使う鎮静剤、鎮痛剤、麻酔法は少しずつ違ってきます。
少しだけ麻酔関連のお話しをすると、
鎮静や痛み止め薬としては、ブトルファノールやブプレノルフィン、メロキシカム、ロベナコキシブ、メデトミジンなどを使います。
麻酔前投与薬として、ミダゾラム、アトロピン、グリコピロレート、アルファキサロン、プロポフォールなどをよく使います。
状況によって、メデトミジン、アセプロマジンなどを併用することがあります。
最後に皮膚(腹膜や腹筋皮下組織など)を縫合する際には、局所麻酔薬(ブピバカインなど)を局注して、術後の痛みを軽減します。
術前〜術後、退院にいたる過程で、いずれのタイミングにおいても何らかの「痛み止め」効果が存在し、鎮痛が途切れないように留意しています。
☆もちろん、これらの薬剤を全て使用するわけではありません。
ちなみに、麻酔はこわいというイメージがあるかもしれません。「100%安心な麻酔薬は存在しません。ただし安全な麻酔医は存在します。」
これは、ヒトの麻酔で良く言われている言葉です。私自身もその様に思います。また、麻酔はサイエンス(科学)とアート(芸術)の両方の側面を持つともいわれています。
麻酔下の状態で患部を消毒します。写真の左がペニス先、右に陰嚢が写っています。
ドレープという滅菌布をかけて、患部を切開します。
陰嚢内の精巣を取り出します。ERBEの高周波手術装置 vio300d BiClamp(バイクランプ)で血管と精管をシーリングします。
なるべく、縫合糸を体内に残さないようにしています。使用する場合には PDS-Ⅱを使用しています。
※ PDS-Ⅱは、現在のところ「縫合糸反応性肉芽腫」のリスクがとても少ない糸と言われています。絹糸・より糸・編糸は使用しません。
皮膚をキッチリと合わせて縫合します。また、術後の痛みをさらに軽減する目的で、縫合部に局所麻酔薬を局注します。
約一週間から10日後に患部をチェックします。痛み止め等を自宅で飲んでいただきますが、消毒は必要ありません。
埋没縫合という、糸を皮膚表面に出さない縫合を行えば、エリザベスカラーの装着も必要ありません。
↓下の写真は、術後再診時にチェックした患部です。
★ 不妊手術(避妊手術・去勢手術)をお考えの方は、ぜひご相談下さい。
さいたま市 武内どうぶつ病院