★犬の高脂血症(中性脂肪やコレステロールの値が高い時はどうしたらよい?)

※ 以下のページを記載したのが2017年です。日々獣医療も進化しています

とはいえ「基本的な概念」は変わっていませんので、このページはそのまま残しておこうと思います。(2020春)

※ 記事の最後に現在、使用することが多い?犬の高脂血症治療薬について記載を追加しました(2022年)

文末にアップデートのリンクを貼っておきますので、こちらもご覧下さい

 

高脂血症は大まかに、「一次性高脂血症」、と「二次性高脂血症」の2つに部類されます。

一次性高脂血症」は、原因不明または遺伝的に見られる原発性の高脂血症であり、主にリポ蛋白リパーゼ(リポ蛋白を分解する酵素)の活性低下が原因と見られています。この例として、ミニチュアシュナウザーの高トリグリセリド血症や、シェットランドシープドッグの高コレステロール血症は比較的頻繁に見られる疾患です。他にもドーベルマンピンシャーや、ロットワイラーの一部の家系で報告があります。特にミニチュア・シュナウザーにはかなり頻繁に見られます。

二次性高脂血症」は、基礎疾患がありその結果として、高脂血症が生じるものです。基礎疾患とは、「膵炎、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症(クッシング)、糖尿病、肝臓病、腎臓疾患(ネフローゼ症候群)」などがあります。

また、血中の脂肪分は食後すぐには、健康犬であっても上昇しますので、これは異常ではありあせん。(食後高脂血症)

高脂血症を診断することは難しくありません。血液検査で、中性脂肪やコレステロールを測定する事で判定できます。しかし、先ほど述べたように正常な動物でも食後は高値になることがあるので、キチンと絶食してから採血する必要があります。(少なくとも8時間以上、可能なら12時間の絶食時がおすすめです)

ちなみに、食後8時間以内に測定して正常値がでているならば、あらためて絶食して採血する必要はないと思います。

高脂血症による症状ですが、大きな症状が現れることは稀です。時に、食欲減退、嘔吐、下痢、角膜脂質沈着、ブドウ膜炎などがおきることがあります。

もっとも注意しなければならないのは、高脂血症そのもののではなく、高脂血症が引き起こす二次性の疾患です。その中でも「膵炎」が最も注意しなくてはならない疾患です。「膵炎(急性膵炎)」は病状が急速に進み、時に数時間〜数日で命を落とすこともあり得る疾患です。「急性膵炎」とりわけ重症度が高い激症型といわれるものは、午前中に入院治療スタートしても、午後には敗血症やDICと呼ばれる重篤な多臓器不全の状態に至ることすらあります。

高脂血症がどの程度、膵炎のリスクに関与しているのは判っていませんが、当院では「中性脂肪」が500mg/dlを越えている場合には、積極的な原因追及や治療をお勧めしています。

また、中性脂肪(TG)やコレステロール(Tcho)の値のみならず、他の肝臓・胆嚢関連のデータやホルモン関連のデータに異常がないかチェックしておくことは

重要です。上記のように時に、「肝炎」や「腎疾患」「ホルモン疾患」が隠れていることがあります。

 

そして、少なくとも一度は、超音波検査(エコー検査)を受けて肝臓自体や、その他の腹部臓器のチェックを強くおすすめいたします。

 

「まとめ」

 1.高脂血症が疑われたら、12時間以上の絶食(お水は飲んでOK)で血液検査を実施します。その際にチェックしていない血液検査項目があれば、同時にチェックする。

同時に、超音波検査をして他の内臓疾患が併発していないか、見ておく(←重要!)

2,高脂血症が確定したならば、他にホルモン異常などの他の二次疾患がかくれていないか検査・検証(※)し、異常ならばそちらの治療をスタートする。

3、太っていたなら減量する。(痩せていたら減量すると、やつれてしまいますので必要はありませんが、身体の筋肉・脂肪バランスを整える必要はあるでしょう。)

4,食餌療法 (間食を含めた、食生活を見直してみます。「低脂肪食」や「サプリメント」時に「漢方薬」などの使用を考慮します)

5,以上を実施しても充分な効果がなく、トータルリスクが高いと判断したならば投薬(内服薬)治療を考慮し、どのタイプの薬が有効なのかモニタリングしていく。

 

※ 繰り返しますが、「検査・検証」には、血液検査や、レントゲン・超音波検査といった画像診断検査などが必要になります。

※ 必ずしも「高脂血症」イコール「肥満」という図式はあてはまりません!!痩せている子でも、高脂血症の子は存在します。

※ 「高脂血症に対する内服薬」は色々なものがありますが、その子によって有効な薬は違ってきます。

※ 当院で使用することが多い高脂血症関連の内服薬

「ペマフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラート(2021年、製造中止)

プラバスタチン」などです。

 

高脂血症は症状が出にくい疾患です。当院では、若い子でも年に1回、シニア期に入ったら、年2回の健康診断(総合血液検査など)をおすすめしています。

その他、「ワンにゃんドック」もございますので、ご相談ください。

「さいたま市 大宮区 武内どうぶつ病院」

 

高脂血症について(その2)